『双子のわたしたち』
ある日、私はここに来ました。前の子が壊れてしまって、新しい相棒を探しに来た家主様。
私たちは、並んで展示されていました。
そう、私は”双子” 。でも、家主様の目的は私だけ。
それなのに——
家主様は、私の片割れも気に入って、ふたりまとめて連れて帰ってくれました。
それからの日々、家主様は毎日、私たちを大切にしてくれました。
あたたかい笑い声、いい香り、家族の団らん。そのすぐそばに、私たちがいつもいました。
けれどある日——
家主様はお仕事の都合で、お引越しすることに。
新しい方が家を見に来て、言いました。
「全部新しくしたいんです‼」
まだ元気な私たちは、ただ黙って見つめていました。
まだ頑張れるのに……。
でも仕方ないのかな。
やがて作業の人たちがやってきて、私たちは外の空気の中へ。
冷たい風。初めて感じる寂しさ。
けれど、みんなとても丁寧に扱ってくれました。
まるで、どこかに連れていってくれるみたいに。
毛布にくるまれて、しばらく静かな場所で過ごしました。
時間がゆっくりと流れていきます。
そして —— ある日、再び動かされたのです。
ドキドキしながら、目を閉じたまま運ばれていく私。
スクラップするのに、こんなに優しくしてくれるの……?
あれ…… どうしたの……? 勇気を出して、目を開けてみました。
あれ……?
きれいな光。
見覚えのある台。
でも、少し違う場所。
私たち、また並んでいる!
また‟ここ‟に立っている‼
新しいおうちで、また働けるんだ‼
こんなにうれしいことがあるなんて!!
ありがとう‼
これからも、おいしい時間をつくるお手伝い、がんばります‼
—— そう。私たち双子は、 ガスコンロとガスコンベックなの‼