リフォーム・修理色々

INOKENナラティブ‼世代交代 シリーズ5

2026/02/03

小さな空間の片隅に腰を据え、火を灯してぬくもりを育てる――
それが私の役目でした。

「カチッ、ゴォー」

その合図とともに白い湯気が立ちのぼり、やがて部屋いっぱいにやわらかな空気が広がっていく。

冬の凍える夜も、夏の一日の終わりも、私は静かにここで息をしてきました。

扉の向こうから聞こえる笑い声。
一日の疲れがほどけていく、あの長い吐息。

そのたびに、胸の奥がじんわりと温かくなるのです。

けれど、時代は少しずつ景色を変えていきます。

「もう少しゆったりとできたらいいね」
「準備がもっと簡単になったら嬉しいな」

そんな声が、いつの間にか増えてきました。

ある日、工事の人たちがやってきて、私のまわりを囲みました。
手際よく道具を動かしながら、これからの話をしています。

その様子を見て、胸の奥が少しだけ、きゅっとしました。

数日後――
まわりはすっかり整えられ、私の姿は静かに役目を終えました。

そして現れたのは、明るく整った新しい空間。
やさしい光に包まれ、使う人の動きに寄り添うつくり。

「わぁ、明るい!」
「これなら毎日が楽だね」

弾む声が響き、その場所は新しい輝きに包まれました。

私はそっと見守りながら、心の中で拍手を送ります。

だって、私がここにいたからこそ、この家の人たちは
‟心と体をゆるめる時間″を知ったのだから。

そして今、あの新しい空間が
‟もっと快適なひととき”を届けていく。

少し切ないけれど、誇らしい瞬間。

私は静かにバトンを渡しました。

ありがとう。そして、よろしくね。

–これは、長いあいだ暮らしを支えてきた昔ながらのお風呂設備から、
快適で安全なユニットバスへと受け継がれた、世代交代の物語です。

この家のあたたかな時間は、これからも続いていきます。

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