私は長い間、この部屋を覆ってきました。
柔らかな感触で足元を受け止め、冬の冷たさから人々を守る――
それが私に与えられた役目でした。
子どもたち寝転び、絵本を広げる午後
家族が輪になって語り合う夜。
そのすべての時間を、私は足元から支えてきたのです。
けれど、暮らしは少しずつ変わっていきました。
「お手入れが大変だね」
「細かいものが気になるようになってきた」
そんな声が、いつの間にか日常に混じるようになりました。
ある日、静かな足音とともに作業員さんがやってきました。
私は丁寧に、少しずつ、その場所を離れていきます。
そして姿を現したのは、整った表情をした、新しい足元。
さらに、その奥には、目には見えないけれど確かなぬくもりが息づいていました。
「あ、暖かい」
「足元から、じんわり来るね」
弾む声とととに、部屋の空気が少し変わったのを感じました。
私は、ほんの少しだけ、名残り惜しくなりました。
それでも、不思議と胸の奥は静かでした。
この家の人たちは、私とともに「床に座る安心」を知った。
だからこそ、次の快適さを、自然に受け入れられたのだと思うのです。
世代交代――
切なさと、誇らしさが入り混じる、その瞬間。
私は静かに役目を終えました。
ありがとう。
そして、これからは君が、この場所を温めていく。
–そう、私は「カーペット」。
彼は「床暖房の入ったフローリング」です。
足元から始まる暮らしの物語は、今日も静かに続いていきます。


