リフォーム・修理色々

INOKENナラティブ‼ 私は○○ シリーズ12

2025/11/11

『静けさの中の使命』

また冬がやってくる。 空気が乾いて、暖房器具が活躍する季節。

私にとっては、少し緊張が高まる時期でもある。

この家に来て、もう10年以上になる。

天井の片隅で、ずっと見守ってきた。

誰にも気づかれない日々が続くけれど、それでいい。

それが、私の仕事だから。

でも最近、少し違和感を覚えるようになった。

センサーの反応が鈍くなってきた気がする。 電池の残量も、そろそろ限界かもしれない。

それでも、止まるわけにはいかない。

万が一の時、私が知らせなければ、誰も気づかないかもしれない。

命がかかっている。

そんなある日、家主さんが脚立を持ってやってきた。

私を見上げて、静かに言った。

「そろそろ交換の時期かな」

私は何も言えない。けれど、心の中で思う。

「ありがとう。ずっと気にかけてくれていたんだね」

数日後、新しい仲間がやってきた。

彼は最新型で、より正確に、より早く異常を察知できるらしい。

私は静かにバトンを渡した。

ありがとう。

そして――よろしくね。

……そう、私の名前は「火災煙報知器」。

静けさの中で、ずっとみんなを守ってきたんだよ。

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