私は、いつも受け止めている。
誰かが帰ってきたときの足音。
誰かが泣いているときの重たい気配。
誰かが笑っているときの軽やかなステップ。
全部、私の上で起きている。
先週、住人さんが引っ越していった。
最後の日、掃除機をかけながら「ありがとう」って言ってくれた。
私は、何も言えないけど——ちゃんと聞こえてたよ。
そして今日、また作業服のおじさんたちがやってきた。
「だいぶ傷んでますね〜」
えっ…傷んでる…? 確かに、何度も走られたし、何度もこぼされたし、何度も踏まれた。
でも、それは私がこの家族と一緒に過ごした証。
「全部、張り替えましょう」
ペリペリ…バリバリ… 私の“肌”が剥がされていく。
ちょっと痛い。
でも、仕方ない。
新しい板が並べられて、トントンと音が響く。
私は、また新しく生まれ変わるんだ。
そして今日、新しい住人さんがやってきた。
子どもが走って、荷物が置かれて、スリッパがすべって——
あぁ、また始まったんだ。
この家族の物語が。
私は、これからも受け止め続ける。
喜びも、悲しみも、全部。
だって私は——
フローリング床だから🏠✨


