私は、長いあいだこの家の壁に寄り添ってきました。
昭和の頃から、テレビやラジカセ、扇風機の電気を送り続けてきた。
子どもがゲーム機を差し込んで夢中になっていた日も、 家族が集まって団らんしていた夜も、 私はずっとここで見守ってきた。
でも、最近は少し疲れてきた。
差し込み口はゆるくなり、カバーも黄ばんでしまった。
「ちょっと危ないかもね」 住人さんのそんな声が聞こえたとき、 私は少し寂しかったけれど、同時に安心もした。
もうすぐ役目を終えるんだ、と。
やがてリフォームの職人さんがやってきて、 私をそっと外してくれた。
「長い間ありがとう」 そんな言葉が聞こえた気がして、胸が温かくなった。
そして、新しい仲間がやってきた。
真っ白で、ピカピカで、USBポートまで備えた頼もしい姿。
これからの暮らしを支える力を持っている。
私は壁の奥から見守る。
「頼んだよ」 そう心の中でつぶやきながら。
新しいコンセントは、しっかりと差し込まれた瞬間に光を放つように応えた。
これからまた、この家族の毎日を支えていくのだろう。
古い私の物語はここで幕を閉じる。
けれど、この場所に流れる電気と暮らしの温もりは、 ずっと続いていく。
だって私は—— コンセントだから🔌✨


