私は、この家の壁にずっと寄り添ってきました。
カチッと押されるたびに、部屋に光を届けてきた。
子どもが「ただいま」と帰ってきたときも、 家族が食卓を囲むときも、
私の小さな音が合図のように響いていた。
でも、年月は流れる。
表面は黄ばみ、押すたびに少し重たくなった。
「最近、反応が鈍いね」 そんな声が聞こえるたびに、私は少し胸が痛んだ。
やがて、リフォームの職人さんがやってきた。
ドライバーの音とともに、私は壁から外される。
「長い間ありがとう」 その言葉を聞いた気がして、心がふっと軽くなった。
そして、新しい仲間がやってきた。
真っ白で、すっきりとしたデザイン。
軽やかなタッチで、静かに光を呼び込む。
時代に合わせて、省エネ機能まで備えている。
私は壁の奥から見守る。
「これからは君の番だよ」 そうつぶやきながら。
新しく押されると、 部屋いっぱいに明るさが広がった。
その光の中で、家族の笑顔がまたひとつ増えていく。
私の役目は終わったけれど、 この家に灯る光の物語は、これからも続いていく。
だって私は—— スイッチだから💡✨


