カチッ。
今日も誰かが私をひねる。
すると「シャーッ」と透明な流れが走り出す。
ひんやりとした感触が勢いよく広がると、私も目が覚めるような気分になる。
朝は大忙し。
子どもたちが顔を洗い、大人が歯を磨く。
「ジャバジャバ」「ゴシゴシ」音が重なって、私の周りはいつもにぎやか。
でも時々、強くひねられすぎて「ギュッ」と痛いこともある。
それでも、みんなが気持ちよく一日を始められるなら我慢できる。
ある日、知らない人がやってきた。
工具を持って私を外そうとしている⁉
えっ、私、もうお役御免なの?
ドキドキしていたら——
新しい部品を取り付けてくれた。
ピカピカのレバー、しっかりしたパッキン。
にじみ出ていた気配もなくなって、前よりも軽やかに動けるようになった。
夜になると、静かな時間が流れる。
誰も触れない間、私は次の「カチッ」を待っている。
明日はどんな一日を始める人を送り出すのかな。
私はずっとここで、みんなの暮らしを支えていく。
だって私は——
洗面水栓だから(▽)**


