新しいご家族が引っ越してきてから、私は毎日がちょっと楽しみになった。
朝になると、元気な「いってきます!」の声とともに、パタンと閉じられる私の体。
夕方には「ただいま〜」って、ちょっと疲れた足音と一緒に開かれる。
ときどき、宅配便のお兄さんが「こんにちは〜」って声をかけてくれる。
そのたびに私は、ちょっとだけ誇らしい気持ちになる。
だって、みんな私を通ってこのお部屋に来るんだもん。
ある日、ちいさな女の子が私にシールを貼った。
「ここがうちのドアだよ!」って言いながら、キラキラの星のシール。
私はちょっと照れくさかったけど、なんだか嬉しかった。
雨の日も、風の日も、私はここでみんなを見守っている。
外の世界とお部屋の世界をつなぐ、ちいさな境界線。
でも、ここにいると、いろんな物語が始まるのを感じるんだ。
次はどんな出来事が待っているのかな?
私は今日も、しっかり立ってるよ。
だって私は——
玄関ドアだから(▽)


